2012/07/04
水揚げした全ての魚の放射性物質検査を目指し、北茨城市の大津漁協の漁業者らでつくる茨城漁業環境研究会(IFL)が4日、実証試験に乗り出した。魚をそのままの状態で短時間で検査できる測定器を導入し、捕れたばかりのシラスやイナダなどを検査した。当面は、試験のために漁を行い、検査データを蓄積する。その後、検査した魚に安全タグやシールを付けて販売したい考え。消費者に安全安心をPRする新たな取り組みの第一歩に、関係者は大きな期待を寄せている。
導入された測定器の大きな特徴は、同じ魚種を入れた出荷用の発泡スチロールを箱のまま短時間で放射性物質の濃度を計測できる点にある。現在、行政などが行っている検査は魚を切り刻んだ状態で計測器にかける。新たな計測器は魚を傷付けないため、検査で安全が確認されれば、そのまま出荷できる。
測定器は古河機械金属(東京都)が東京大と共同で開発。20キロの検体を約30秒で検査し、全体で検出下限の10ベクレルまで検出できる。同社独自の技術が採用され、今回の試作機で試験を重ね完成度を高めるという。
この日は、水に漬けた魚が入った重さ計15キロの発砲スチロールの箱をベルトコンベヤーで計測器にかけ約1分で検査。シラスとイナダ、タイのうち、タイから13ベクレル(15キロ)の放射性セシウムが検出された以外は10ベクレル以下だった。性能的には1箱当たり最短約10秒で検査できるという。
東京電力福島第1原発事故で、県北部のシラスなどを捕る小型船の漁業者は、サンプル調査で漁をする以外は操業できないままだ。鈴木将之組合長は「北茨城市と大津漁協が全量検査のモデルとして、食の安全の発信基地になればいい」と力を込めた。
IFLの活動を引っ張る東京大大学院の中川聡特任教授は「若いお母さんは、子どもに県内の物を食べさせたくないという人が増えている。あいまいさが生んだ不安がある。今あるべき姿を科学的に、冷静に捉えて対処していくことが大切」と話した。
同日、水揚げした全ての魚の検査を目指す事業の発足式が、大津漁協第三魚市場管理事務所(同市大津町)に設けられたIFLの拠点施設で行われ、豊田稔市長はじめ関係者が出席した。